フローサイトメトリーにはどの蛍光色素が適しているのか?
(Which fluorophores are useful for flow cytometry?)

[English version]

フローサイトメトリーで使用可能な蛍光色素はたくさんあります。その数は増え続けており、このガイドではそのすべてを取り扱いません。 バイオ・ラッドの抗体Webサイト(英語版:bio-rad-antibodies.com)で取り扱っている蛍光色素を、表に示しました。新しい蛍光色素は次々に追加されますので、最新のフローサイトメトリー製品をWebでご確認ください。

単一色素(Single Dyes)

単一色素には、FITC、PE、APC、PerCPなど長年使用されているものの他に、Alexa Fluor色素など比較的最近開発された、より光安定性が高く、より明るい蛍光を発するものなどがあります。さらに近年では、短波長のレーザーが以前よりも安価になったため、355nmや405nmレーザーで励起される色素が開発され、マルチカラー実験の選択肢が増えています。

タンデム蛍光色素(Tandem Dyes)

タンデム蛍光色素は、特定の蛍光色素に別の小さな蛍光色素を共有結合したものです。 第一の蛍光色素(ドナー分子)が励起されると、そのエネルギーが第二の蛍光色素(アクセプター分子)に移動します。 これにより、第二の蛍光色素が励起され、蛍光を発します。 このプロセスは、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET:Förster resonance energy transfer*)と呼ばれます。 これは、より大きなストークスシフトを得るための巧妙な方法であり、これにより、一つのレーザー波長から解析できる色の数を増やすことができます。

*:FRETは以前蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence resonance energy transfer)の略称とされていたが、IUPACよりFRETではドナーとアクセプター間で蛍光が伴わないため、正しい名称とは言えず、発見者のTheodor Försterの名を取って略称とすることが推奨されている。(https://goldbook.iupac.org/html/F/FT07381.html)

タンデム蛍光色素の大部分は、多くのフローサイトメーターで搭載されている488nmおよび640nmレーザー用に開発されています。 タンデム蛍光色素は、マルチカラー蛍光実験、特に単一色素との組み合わせにおいて非常に有用です。 例えば、Alexa Fluor 488、フィコエリスリン(PE)、ペリジニンクロロフィルタンパク質(PerCP)-Cy5.5およびPE-Texas Redは、いずれも488nmで励起されますが、それぞれ緑色、黄色、赤色および赤外線光を発しますので、別々の検出器で測定できます。

StarBright Dyes

StarBright Dyesは、フローサイトメトリー用に開発された独自の蛍光ナノ粒子です。StarBright Dyesは、明るく、光安定性があり、励起および発光プロファイルが狭く、マルチカラー化する場合でも専用のバッファーは不要です。488nmと405nmのレーザーに対応した7種類の色素がすでに発売されており、今後さらに多くの色素が発売される予定です。これらの新しい色素により、マルチカラーパネルを構築する際の選択肢が広がり、柔軟性が増します。StarBright Dyesについて詳しくはリンク先情報(日本語版サイト)をご覧ください。

蛍光タンパク質(Fluorescent Proteins)

GFP(Green Fluorescent Protein)のような蛍光タンパク質は、多くの科学分野においてタンパク質機能解析のための不可欠なツールです。 mCherryやYFP(Yellow Fluorescent Protein)などの他の蛍光タンパク質もまた、フローサイトメトリー解析およびセルソーティングに広く使用されています。 蛍光タンパク質は、多くの場合、目的のタンパク質と共発現させるか、融合タンパク質として発現させます。 これらの蛍光タンパク質の利点は、細胞膜の透過処理を必要とせずに、生きた細胞内の分子を解析できることです。 一般的な蛍光タンパク質を表4に示します。

表1. フローサイトメトリーで使用される蛍光色素(Fluorophores for flow cytometry)
Fluorophores Fluorescence Color Maximal Absorbance, nm Maximal Emission, nm Relative Brightness
DyLight 405   400 420 3
Alexa Fluor 405   401 421 3
Pacific Blue   410 455 1
Alexa Fluor 488   495 519 3
FITC   490 525 3
DyLight 550   562 576 4
PE*   490; 565 578 5
APC   650 661 4
Alexa Fluor 647   650 665 4
DyLight 650   654 673 4
PerCP   490 675 2
Alexa Fluor 700 Infrared 702 723 2

* PE is the same as R-phycoerythrin.
APC, allophycocyanin; FITC, fluorescein isothiocyanate; PE, phycoerythrin; PerCP, peridinin chlorophyll protein.

表2.StarBright Dyes
Fluorophores Fluorescence Color Maximum Excitation (nm) Maximum Emission (nm) Relative Brightness
StarBright Violet 440   383 436 5
StarBright Violet 475   405 479 4
StarBright Violet 515   405 516 5
StarBright Violet 570   402 571 4
StarBright Violet 610   402 607 4
StarBright Violet 670   401 667 5
StarBright Violet 710 Infrared 402 713 5
StarBright Violet 760 Infrared 403 754 4
StarBright Violet 790 Infrared 402 782 4
StarBright Blue 700   470 705 5
表3.フローサイトメトリーで使用されるタンデム蛍光色素(Tandem dyes for flow cytometry)
Fluorophores Fluorescence Color Maximal Absorbance, nm Maximal Emission, nm Relative Brightness
PE-Alexa Fluor® 647   496, 546 667 4
PE-Cy5   496, 546 667 5
PerCP-Cy5.5   490 695 3
PE-Cy5.5   496, 546 695 4
PE-Alexa Fluor® 750 Infrared 496, 546 779 4
PE-Cy7 Infrared 496, 546 785 2
APC-Cy7   650 785 2

* PE is the same as R-phycoerythrin.
APC, allophycocyanin; PE, phycoerythrin; PerCP, peridinin chlorophyll protein.

表4.フローサイトメトリーで使用される蛍光タンパク質(Fluorescent proteins in flow cytometry)
Fluorophores Fluorescence Color Maximal Absorbance, nm Maximal Emission, nm Relative Brightness
EBFP   383 445 2
CFP   439 476 2
EGFP   484 509 4
YFP   514 527 5
RFP   558 583 4
mCHERRY   587 610 3

Alexa Fluor®, Texas Red and Pacific Blue™ are trademarks of Molecular Probes Inc, USA
DyLight® is a trademark of Thermo Fisher Scientific and its subsidiaries
Cy is a trademark of GE Healthcare group companies.